ああ‥ 無情


私は小学校低学年の時、青虫を飼っていた。
キャベツに付いていた若草色の糸くずのような、細くて小さな生き物。
それが、我が愛情を一身に受け(- -;)、みるみる赤ん坊の指のように肥え太っていった。
昔はもっと可愛かった‥などということには目をつむり、「もっとおっきくなれよ〜 うふふふふ」と育てる喜びにひたる私。
これだけブタになれば、そろそろサナギと化すに違いない‥。勝手な確信に、更に上機嫌は増す。
そんなある日、母が言った。

「日光浴させてやんなさい」

ほーう‥ それは気付かなんだ‥。
母の助言に従い、早速、「青虫ちゃん」をベランダの葉ボタンの上に置く。
そして、数時間後‥
「あっおむっしちゃぁあん♪」とご機嫌でお迎えにあがった。

‥‥が、いない。

いっくら探しても探しても(×10)、どーこーにーもー奴の姿はない。
「かあさ〜〜〜んっっ!! 青虫がいないーーーっっ!!」
必死で訴える私に、母はこともなげに言った。

「スズメに食われたんじゃない?」


え”‥‥‥(暗転)



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