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▼ 名物スポットにいらっしゃ〜い♪(その18)

 裸で走ろう! ―― オリュムピア


 愛の女神アフロディテの暇つぶし企画「神話世界一周旅行」に付き合わされるハメになった貴方。
 今週も、虹の女神イーリスの案内で行ってみよ〜!

 世界の中心・デルフォイ。その神殿の奥部で、輝きに包まれて眠り続ける美青年――。 もちろん、その正体は、この神殿の守護神である太陽神アポロン。

貴方(黙ってりゃ、神々しいんだけどねぇ…… ^^;)

 ぷぴー……と寝息を立てているアポロンを覗き込むと、貴方はやれやれと息をついた。
 エロスの愛の矢の効力で、病的なまでに貴方に夢中なアポロン神。起きていると何かと面倒くさい。

貴方「ところで…… 愛の矢の効力ってのは、どのくらい続くんでしょう?」

 貴方を連れてこの地に降り立ったイーリス女神に、かねてからの疑問をぶつけてみる。

イリ「ごめんなさい。よくは存じません……。とにかく威力絶大で、その力にはゼウス様ですら抗えない…とか」

貴方「解除する方法は……?」

 悲しげに視線を落として首を振るイーリスに、ちょっぴり絶望感〜の貴方。

イリ「けれど、きっとヘルメス様が、解決策を見つけて来て下さいますよ」

貴方「そ、そうですね……。それに、ずっと寝せとくわけにはいきませんもんね、太陽神を……」

アポ「そうそう! もういい加減飽きて来ちゃったよ〜。おうちに帰っちゃダメー?」

 いきなり喋り始めたアポロンに、げっ…とおののく貴方。

イリ「あっ、大丈夫です。今のはアポロン様ではありません。もう、モルモル! 驚かせてはダメでしょう?」

貴方「も……もるもる?(汗)」

イリ「申し訳ありません。今のは、夢を司る神・モルペウス。眠りの神・ヒュプノスの息子ですわ(※1)。ここまで、アポロン様を運んでくれたのも彼ですの」

モル「モルモルでええよ〜! この兄ちゃんの目が覚めんように、今、夢の中でアンタに変身しとるんや。夢遊病状態にして、なんとかここまでは連れてこれてんけど、もう堪忍してほしいわ……。油断すると、すぐ抱きついてくるわ、歌い出すわで……疲れてん……」

イリ「も、もう少しの辛抱よ。ファ、ファイト! モルモル!」

モル「ま、頑張ったらヘルメスが良いトコに連れてってくれる言うてたしな……。なぁ、イーリスの姉ちゃん、めくるめく大人の世界…って何?」

ヘル「わっ、馬鹿、コラ、し――――っ!!」

 降って湧いたように現れるなり、アポロン神(= モルモル)の口をふさいだのはヘルメス。

ヘル「や、やあ。お待たせ……」

 白い目で出迎える貴方とイーリスに、焦ったように笑いかける。

イリ「ヘルメス様……。モルペウスにあまり妙なことを……」

ヘル「わ〜 わかってるよ〜。ヤダなぁ〜。よし、モルモル。終わったら、この世界最速の空飛ぶサンダルで、夜空をぶっとばすぞ〜!」

モル「わ―――い♪」

貴方「止まれないと激突するんだよ…… 地面とか岩に……」

ヘル「しっ失敬だな、君はぁ……。あっ、何、イーリスまでその目? 神速の貴公子と呼ばれる僕の腕を信用してないの〜?(嘘八百) それよりさ、ほい、お土産」

 ヘルメスがキラーンと袋から取り出したのは、鉛のやじりにフクロウの矢羽根のついた矢。

イリ「もしやこれは、エロースの……」

ヘル「そ。『愛をはねつける矢』さ。こいつに射られた者は、恋なんてもってのほか、アンタなんて大嫌いよ〜…となっちゃうわけ。こいつでアポロンをチクリとやりゃあ、先に射られた『愛の矢』の効果も、ちっとは中和されるんじゃないかなぁ…ってね。上手くいったら、無敵の『愛の矢』にも思わぬ弱点。エロースの奴もショックだろうぜ〜(※2  この辺、大嘘)」

イリ「それでも、協力してくださったんですよね。エロース様もお優しい……」

ヘル「ああ。これは、お昼寝中だったんで、ちょーいと失敬をば……」

 エヘ……と可愛く頭を掻いてみるヘルメス(……似合わん)。

ヘル「さ、こいつでアポロンをぶっすり刺して、目ぇ覚ましてやんな。自分のこと刺さないように気を付けて持つんだぜ。それじゃあ、俺達は隠れてるから。一番最初にアポロンが君の顔を見るように仕向けるんだ。そうそう、この矢じゃ怪我しないから、遠慮なく刺せよー!」

モル「じゃあ、オイラも行くよ。この人、すぐに目覚めるからね……」

貴方「え? もう? えぇええとー?? ……いっちゃえっ!」

 ―― グサッ!!

アポ「……うーふふふふん。むにゃ……麗しの君〜♪(寝ぼけモード)」

貴方「それはいいですから、起きて下さい……(汗)」

アポ「ん?? んん???? 誰? 君? いや、よく知ってるハズなんだけど……。あれ、なんか一緒に、天界巡ったり……」

貴方「あ、それは夢です。あんまり長くお眠りになっているので、お起こしに参ったのです」

アポ「そーなの? どーでもいいけど、君、可愛いね〜。よければ、一緒に、お空のランデヴー……」

イリ「まぁ! アポロン様! このようなところに!? やっと見つけましたわ。お早く天界へお帰り下さいませ。貴方様の歌声がないと宴会も盛り上がらないと、皆様、待っておいでです……(ああ。こんな強引な嘘、通じますの…… ^^;)」

アポ「えー? そうー? 仕方ないなぁ〜(←ちょっと嬉しそう)。あれ? さっきの子は?」

イリ「誰のことです? 夢でも見られたのでは……?」

アポ「ん〜?? まぁ、いいか……。んじゃ、行こっか……」

 まだ寝ぼけた表情で、天界へと帰っていくアポロン。

 イーリスとの陽動作戦で貴方を隠したヘルメスが、小さくガッツポーズをする。

ヘル「刺し方が甘かったみたいだけど、なんとかセーフだな。それじゃあ、ちょっとだけ海に寄って、君を生き返らせるぜ」

貴方「生き返れるんですか!?」

ヘル「ああ。とりあえず、天界・冥界が済んで、最後に海を巡れば、世界一周旅行も一通り完了さ。これならアフロディテも文句はないだろう? それに彼女、君のことをとやかく構っている暇は、なくなるだろうしね…… フフフ」

 何を企んでいるのか、悪戯な笑いを漏らすヘルメス。貴方はあえて突っ込まない。

ヘル「そうそう、地上で他に行っておきたいところはないね? ドドナやオリュムピアは別にいいかい? どっちもゼウスの神殿があるところだけど……」

貴方「ドドナ…… なんか有名な神託所ですよね?」

ヘル「わかってるじゃない。ま、ここデルフォイに人気は抜かれ気味だけど、最も古い神託所のひとつさ。ある日、エジプトのテーバイから二羽のハトが飛んできて、そのうちの一羽がこの地の樫の森に降りて、ゼウスの神託所を作るように命じたんだ(※3)」

貴方「たしか、そこの巫女さんって……」

ヘル「そう。樫の木の葉ずれの音から神意を聞き出すんだ。意外に高等技術だろう?」

貴方(風の吹く日は忙しそう…… −−;)

ヘル「それと、オリュムピア。オリュムポスとは別の場所だぜ?」

貴方「それはさすがに知ってますよ〜。ゼウス様に捧げる競技大会、オリュムピア祭が開かれる場所ですよね」

ヘル「ああ。4年に一度、真夏に5日間…。競走、跳躍、レスリング、円盤投げ、槍投げの五種目の競技が行われるんだ。各地から観客が大勢押し掛けて、街も大にぎわいさ(※4)」

貴方「すごいんでしょうね〜。勝利者の名声は遠方まで知れ渡ってますもん」

ヘル「けど、ま、今は時期はずれ。それに、君も神殿は見飽きてるか〜?」

 その通り…と肩をすくめる貴方に、ニヤリと笑み掛けるヘルメス。貴方の手を取り、上空へ飛び立つ。

ヘル「それじゃぁ、最速記録でも叩き出してみますかぁ……」フフフ

貴方(…………い”っ!?)

 言うなり、遮るもののない空を、我が物顔でぶっ飛ばすヘルメス神。

 ひぎぇええええええ……と声にならない叫びを上げつつ、次回へ続く〜!


 ※1 ヒュプノスの大勢いる息子の一人。もしくは、ヒュプノスの別名と言われてる。
    独断と偏見で、ちょっと子供…なイメージにしちゃいました〜(なので信じないでね)。

 ※2 「愛の矢」の効力を「愛をはねつける矢」で中和……うんぬんは創作ですので、信じないでね〜!!

 ※3 もう一羽のハトはリビュアかどっかに飛んでって、同じような命令を伝えたらしいっす。ちなみに樫の木はゼウスの神木〜。

 ※4 初期の頃は、もっと競技数も少なかったらしいが、後には、音楽や詩歌や雄弁の競技なんかも出来たらしい。
    昔は五年に一度だった……と書かれてる本もあったけど、詳しくは不明(ごめんなさい)。
   で、勝者にはオリーブの冠が贈呈〜(この前見た、クイズ番組では月桂冠って言ってたけど…… ^^;)。
   ついでに、女人禁制で(女神官以外。覗いたら死刑)、競技者は全裸だったそうな〜。


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